去る8月17日、ゲンロンカフェのイベント
「作家が語るゲームシナリオの可能性 ──かまいたちの夜からドラゴンクエスト、そしてApex Legendsまで」
に登壇してきました。
冒頭約30分youtubeで無料公開されています。
このイベントでは私、いくつかスライドを使ってプレゼン(?)したんですが、その1つめをほぼぜんぶ観ることができます。
「俺は○ッ○ルさんみたいになりたくない」という問題発言も飛び出してますよ笑
続く有料部分は↓のシラスのサイトで観れます。
この有料部分の最初の方でプレゼンしたのが、表題の
【1988年が「ゲーム小説元年」 説】です。
これ今回のイベントの準備でいろいろ記憶を辿りながら調べてて気づいたことなんですが、ちょっとした「発見」なんじゃないかなと思ってます。そうでもないかな。どうだろう? というわけでブログで記事にして残しておく次第です。
いわゆる「ゲーム小説」と呼ばれうる小説は
①ゲームのノベライズ
②ゲームについての小説
③ゲームが出てくるわけではないけれど世界観がゲームの小説
に大別できると思うんですが(※なお、ここで言う「ゲーム」は「ビデオゲーム」のことです)、
①ゲームのノベライズ
ベニー松山『隣り合わせの灰と青春』88年12月刊行
(ウィザードリィのノベラズ)
②ゲームについての小説
(架空のゲームが話の中心になる文学作品)
③ゲームが出てくるわけではないけれど世界観がゲームの小説
といようにそれぞれの嚆矢となるような作品がそろって1988年に出版されているんですよね。すごくね? って話。
ただ、これあくまで私が調べた範囲の話であり、これらの作品が本当に本邦初の1作目かは自信ないです。
たとえば、文芸誌に掲載された小説の中には『ノーライフキング』以前にゲームをメインの題材にしたものがあるのかもしれません。
ノベライズでも飛火野耀『イース』が88年3月に出てたりします。ただし『隣り合わせの灰と青春』は同年1月から連載スタートしているのと、『イース』のノベライズはゲームの内容と離れたオリジナルストーリーなのに対して『隣り合わせ~』はウィザードリィのゲームの内容に沿っているので、こちらを挙げました。
また、ゲーム小説と言えるかは微妙ですが、ナムコは85年の段階で『ゼビウス』など自社のゲームを題材にしたゲームブックを刊行しています。
そして、『女神転生』シリーズの原作とされている西谷史『デジタルデビルストーリー』の第一作は86年に出ています。ただ、これ結局メガテンとは違った話ですし、世界観的にも従来型の伝奇小説の色が強く、すんなりゲーム小説と言えるかというとやはり微妙です。
そんなわけで88年以前にも、「ゲーム小説」と言えなくもない作品はすでにあったのかもしれないけれど、やはり嚆矢と言えるのはこの88年刊行の3作ではないか。1988年を日本におけるゲーム小説元年と言っていいんじゃないかと、今のところ思ってます。
繰り返しますが、あくまで素人の私が調べた範囲での独自研究ですけども。
ちなみにこの1988年という年は、ドラクエ3が発売された年です。
世界初のビデオゲームとされている『Tennis for Two』の登場は、そのちょうど30年前の1958年。このゲームはタイトルにあるようにテニスをモチーフとして模したものでした。
その後、様々なゲームが作られてゆく中で「物語」がゲームに忍びこみ、分厚いバックストーリーを持つゲームや、ADVやRPGなどシナリオのあるゲームが登場し、さらには続編によるゲーム同士の物語的なつながりがつくられるようになりました(この辺の話は配信の無料部分でもしてます)。
1983年のファミコン登場以前にこうした状況はすでに出来上がっていましたが、大衆への浸透という意味では、ドラクエのロト三部作が完結した1988年は、ゲームが新しい「物語の器」たりえるとはっきり示された年と言えるのではないでしょうか。
ちょうど同じタイミングで古い「物語の器」の代表である小説がそれを貪欲に取り込んだ、そんな解釈ができるのではないかと、考えています。
そのほか、なつかしの『センチメンタルグラフティ』暗黒太極拳を巡る珍騒動やら、ギャルゲーの進化の話、元スクエニ社員のスケザネさんによるナラティブなゲームシナリオの話、小川哲さんがハマったシビライゼーションの対戦コミュニティの話など、面白い話題山盛りですので、興味ある方は、是非有料部分もご覧ください! 4時間あるけどな!
よろしくね。