新刊『ブラック・ドッグ』発売。
どもども。
と、いうわけで、新刊長編小説『ブラック・ドッグ』が、発売になりました!
- 作者: 葉真中顕
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「人間と動物は完全に平等であり、人間の都合で動物を利用することは差別──種差別(スピーシズム)──である」という思想を掲げる過激な動物愛護団体〈DOG〉。
彼らは、東京湾に浮かぶ人工島「海の森」のイベント会場を封鎖。来場者を閉じ込めた上で、人を食らう巨大な獣を解き放つ。
閉鎖空間の中、襲い来る恐ろしい獣たち。人間と動物は何が違うのか。人間を人間たらしめるのものは何か。極限状態で問われる倫理の限界線。生き残れるのは誰だ?──的なパニックホラーです。
本作には、大きな元ネタとなっている本が、二冊あります。
ピーター・シンガー『動物の解放』
- 作者: ピーターシンガー,Peter Singer,戸田清
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 単行本
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テンプル・グランディン『動物感覚』
- 作者: テンプルグランディン,キャサリンジョンソン,Temple Grandin,Catherine Johnson,中尾ゆかり
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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どちらも、かつて『犬部!』のコミカライズでシナリオを担当したときに、動物愛護のことを色々と調べていく中で出会った本です。
『動物の解放』は、本作のテーマにもなっている「種差別(スピーシズム)」という考え方を提唱したもの。
著者のピーター・シンガーは功利主義という立場をとる倫理学者なのですが、彼は合理的な理論展開で、肉食の禁止をはじめとする、かなり極端な動物愛護思想を導きます。
わたし自身は、お肉大好きだし、シンガーの議論は受け入れられないのですが、いざ、否定しようと思うと、かなり難しい。それどころか、合理的に考えるとシンガーの結論が正しく思えてしまうんですね。(この辺の理路はアレンジして作品に反映してますので、是非確かめてください)
でも、その正しさを受けれてしまえば、たぶん今の人間社会を根本からひっくり返さなければならなくなってしまうわけです。やっぱり、わたしは受け入れらない。
で、こういうジレンマって、エンタメになるんじゃないかな、と着想を得ました。
もう一冊の『動物感覚』の著者、テンプル・グランディンは、ASD(アスペルガー症候群)の当事者でありながら、世界中の動物施設の監査をする動物学者です。
彼女は、暗算が得意だったり、緻密な絵が描けたりと、特定の領域でだけずば抜けた能力を発揮する「サヴァン症候群」のASD当事者の持つ感覚は、動物のそれと近く、ASDは人間と動物の間にある駅であると表現します。
彼女の主張は、シンガーとはまた違った形で、わたしたちが固定的に考えがちな人間と動物の関係を問い直すもので、とてもエキサイティングでした。(ちなみに、彼女は普通に肉も食べる人です)
で、こういった本で得た知見を、わたしなりにぐにゃぐにゃに解釈し、更に強引に『ミスト』とかのパニック要素と雑ぜ繰り合わせ、できあがったのが本作です。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2016/02/17
- メディア: Blu-ray
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今回は、これまでの作品とやや趣を変え、かなりエンタメに寄せた作品になっております。いっぱい人が死ぬし、例によって人間のクズもいっぱい出てくるんですが(笑)、そいうのが嫌いでなければ、ハラハラドキドキ、楽しんでいただけると思います。
是非、ご一読ください!
よろしくお願いします。ガオー!!